新婦人しんぶん 2009年5月14日号
私たち新日本婦人の会訪中代表団(団長・米山淳子、団員・平野恵美子国際部長、安達絹恵中央常任委員)は、4月15~18日、中華全国婦女連合会(以下婦女連)の招きで、北京を訪れました。米山淳子事務局長のレポートです。
婦女連との定期交流を始めて10年、今年4月に創立60周年を迎えた婦女連との活動交流をはじめ、女性再就職プロジェクトや農村女性開発プロジェクトなどの地域活動、幼稚園の親子教育活動の視察を通じて具体的な経験にふれ、相互理解と親交を深めあいました。
■日本の女性の実態やNGOの活動内容も
新緑の鮮やかな季節、空港から市内へと続くポプラ並木は、雪のように柳絮(りゅうじょ)が舞い、昨年オリンピックを終えた北京は、道路や地下鉄も整備され、かつてのような自転車が何列も並んで走っている姿はほとんどありません。走行する車両の多さ、立ち並ぶ高層ビル群に目を見張りました。「内需拡大」政策で国内観光が奨励されており、オリンピックのメインスタジアムの「鳥の巣」や故宮などの観光スポットは、全国各地からの団体観光客でにぎわっていました。
婦女連との会談では、金融危機のもとで悪化された解雇問題や格差拡大の実態、女性と子どもの日常生活、女性のエンパワーメントをめざす活動の紹介や意見交換をしました。また、応対した鄒国際部長は国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の委員で、今年7月の日本政府報告審査を担当することもわかり、出発前夜に完成したばかりの新婦人のレポートを手渡し、直接日本の女性の実態やNGOの活動内容を伝えることができたことも意義深いことでした。
■政治参加とDV防止法の法制定へ
中国の女性の地位向上・男女平等めざすとりくみは、1995年の北京会議以降、女性権益保障法にもとづく「計画」とCEDAWの実施を位置づけてきました。この間、女性権益保障法、婚姻法、就職促進法などの法律制定や改正にとりくみ、婦女連も学習会やシンポジウム、専門家の助言などを得て積極的に提言。あわせて06年のCEDAW審査の勧告で強調された、女性の政治参加とDV防止の国レベルでの法制定に向けて、政府に要請しているとのことです。
現在、昨年の全国大会で打ち出した①政府や国際基金の支援を得た農村や貧困層に対しての小口融資の規模拡大。②教育・訓練を通じて女性の資質・能力向上。③婦人病検査・健診の拡充。④女性の意思決定参加の推進の4つの重点にとりくんでいます。
特に、遅れている分野である農村女性の健康、保健・医療、政治参加について、一気に引き上げていくため力を集中していること、また7万6000人の専従者、100万人のボランティアを擁する婦女連が、幹部・専従者向けに具体的な目標を設定し、CEDAWも位置づけた幹部教育プログラムを作成し、教育・訓練を推進しているとりくみは印象的でした。
■「自己責任」ではなく政府が対策を
中国でも解雇や貧富の格差などの問題がありますが、日本と決定的に違う点は、「自己責任」として放置するのではなく、国として手立てをとっていることです。
政府が企業に解雇禁止令や倒産への補助金をだすなど雇用や再就職の対策をはじめ、直近でも人権保護の措置と目標を定めた初の「国家人権行動計画」、公的医療保険の加入率を引き上げる医療制度改革などの政策を次つぎと打ち出しています。
女子学生の就職難解消のための企業への働きかけや、再就職を希望する女性たちのニーズにあわせたプロジェクトなど、政府とコミュニティのかけ橋となる婦女連の活動とあわせて、中国政府の社会全体の底上げに真剣にとりくむ姿勢と政治的意思を強く感じました。同時に、女性差別を撤廃していくという同じ目標に向かって相互のとりくみをつよめていく決意を固めあえたことも、大きな収穫でした。