学校の断熱化、冷暖房と換気が両立するよう換気扇の自動運転装置の設置を求める自治体向けの要請書見本を作成しました。
新婦人しんぶん11月4日号8面の「子どもたちの健康を守り、環境にやさしい学校の断熱化を」も持って、できるところから教育委員会への要請行動にとりくみましょう。
※要請書の見本は下記よりダウンロードできます(Word)
【要請文例】子どもたちの健康を守り、学ぶ環境の改善のために学校教室の断熱化をすすめてください
※新婦人しんぶん11月4日号8面は下記よりダウンロードできます(Pdf)
子どもたちの健康を守り、
環境にやさしい学校の断熱化を
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授 前真之さんに聞く
熱が出入りし放題の教室
公立小中学校普通教室の冷房設置率は95・7%です(2022年9月、文科省)。ところが酷暑のなか、「あまりにも教室が暑くて子どもがかわいそう」と学校の先生から相談を受けた工務店グループに協力を求め られました。
私は住宅断熱を研究しています。断熱の技術は格段に進み、一般住宅も改修によって十分な効果が得られるようになっています。
気温38・2度の日に、校舎の屋上表面温度を計測すると、45度になっていました。屋上から階下の教室に熱が伝わり、教室の天井表面温度は42度です。
エアコンはフル稼働で10度の冷風を出し続けるものの、室温はなかなか下がらず、文科省・学校環境衛生基準の28度になりませんでした。換気扇は壊れていて、教室内の二酸化炭素濃度は基準の2倍を超えていました。
断熱が施されていない多くの教室の天井、窓や壁は熱が出入り自由となっていて、この暑さのなか、エアコンの電気代が増しています。
とっても涼しくなったよ
昨年8月、さいたま市にある小学校の最上階の教室で、断熱工事をおこないました。改修資金はインターネットで寄付を募り、〝断熱の効果を体感し、その大切さを理解するきっかけにしてほしい〟と、工務店に加えて保護者や子ども、教員や他校のPTAも参加するワークショップ形式でとりくみました。
工事は、天井裏にグラスウールを詰め、壁は廊下側を含めてすべて発泡スチロール製の断熱材を設置し(右下写真)、木の羽目板で覆いました。窓は内側にアルミホイルを貼った板で遮熱しました。
施工後、冷房すると室温はすぐに下がり始め、天井の温度も室温とほぼ同じに(上写真)なります。夏休み明け、子どもたちは教室が「前はモワっとしてたけど、工事をしたらキーンと冷えてとっても涼しくなった」「授業にとても集中できるようになった」「木のにおいが素敵」など喜びの感想を寄せました。
さらに壊れていた換気扇を直し、二酸化炭素濃度で空気の汚れを感知して自動運転するコントローラーを設置。教室内の空気がきれいに保たれるようになりました。
国は断熱化の早期達成を
一刻も早く、学校の最上階の教室から天井と壁に断熱材を設置し、内窓の取り付け、自動運転のデマンド式換気をセットで改修した上で、日射の遮へいもできるようにすべきです。教室が健康的な空間に変わり、エアコンの効きが格段に良くなります。
断熱は外気と室内の温度差を作り出し、冬の寒さにも有効です。
不効率で修理も高額な大型のガス式エアコンは必要なくなり、省エネ、安価な住宅用電気エアコンで対応できるようになります。太陽光発電と組み合わせれば、気候対策にもたいへん有効です。
学校の環境整備の責任は国と行政にあります。教室の断熱化工事は地域の工務店ででき、費用は一教室100~150万円ほど。
今後ますます暑くなると科学者が指摘するなか、国はすべての学校の断熱化の早期達成目標を示し、継続的に予算を確保することが求められます。確保された予算を使って広くとりくまれるように改修申請の具体例などを自治体に示すべきです。