2011年10月27日 国際活動

日本原水協国連要請代表団に参加して核兵器全面禁止条約へ 必要なのは政治的意思

2011年10月号 地球発より

新婦人国際部長 平野恵美子

原水爆禁止日本協議会(日本原水協)は10月2日から10日まで、ニューヨークの国連本部に要請団を派遣、私は新婦人を代表して参加しました。

(詳細は『月刊女性&運動』12月号掲載)

ドゥアルテ国連軍縮上級代表に署名を渡す筆者

ドゥアルテ国連軍縮上級代表に署名を渡す筆者

核兵器全面禁止署名 102万を届ける

代表団の目的は、2月からスタートした核兵器全面禁止へ条約の交渉開始を求める国際署名102万9031人分を国連に届け、軍縮や安全保障問題を話し合う国連第1委員会に向けて各国の政府代表に要請すること、アメリカの平和団体と交流を深めることでした。高草木博原水協代表理事を団長に、原水協から事務局次長の土田弥生さんや新婦人から私、青年4人含む各県原水協の代表ら総勢16人で構成、9日間にわたって精力的に活動しました。

民主主義もたらす署名

活動開始の10月3日、第1委員会の開会総会冒頭、基調演説を行ったのは、この間、世界大会に参加し、昨年、リブラン・カバクチュランNPT再検討会議議長とともに、日本からの署名700万を受け取ったセルジオ・ドゥアルテ国連軍縮上級代表。なんと「ゲンスイキョウ」ということばが発せられたのです。
ドゥアルテ氏は核軍縮へのとりくみのひろがりに言及し、国連事務総長が初めて広島・長崎を訪問し、核兵器禁止条約を求める署名を陳列した「国連軍縮展」を設けたこと、その署名には平和市長会議が集めた100万を超える署名が含まれていることを紹介。続いて、「もう一つの国際署名もまたそうした条約を支持するもので、日本の団体である原水協がNPT再検討会議に提出したものです。それは700万筆にのぼるものでした」と述べたのです。日本政府含め各国代表が勢ぞろいする中での発言です。震災後悲しみと不安と恐怖を抱えながらまっ先に被災者救援に立ち上がり、放射能被害をなくそうと、原発ゼロとあわせて国際署名を集めてきた全国の会員たちの姿が目に浮かび、胸がいっぱいになりました。
ドゥアルテ氏の発言が圧巻だったのは、こうした市民社会のとりくみを国際政治に民主主義をもたらすものと位置づけたことです。ドゥアルテ氏は世界で強まっている二つの流れとして民主主義と法の支配をあげました。そして、中東から世界に広がっている民主主義革命の流れは軍縮の分野にもおよんでいる、その証拠は世界中の市長や議員、市民社会の行動だと述べたのです。同時に法の支配も軍縮に訪れており、それは核兵器禁止条約をめざす努力にみられるのだと。民主主義と法の支配という二つの力は軍事費削減を実現する力でもあり、軍縮が前進すれば世界は前進する、必要なのは「政治的意思」だというドゥアルテ氏のことばは、私たちの運動に確信と激励を与えるものでした
翌日の国連軍縮局でのドゥアルテ氏との懇談は、これまで以上に心の通ったものになりました。私は、米山淳子新婦人事務局長がカバクチュラン氏に署名を手渡している写真が掲載されている新婦人しんぶんや英文資料などを手渡し、新婦人が昨年は700万のうち150万、今回は102万のうち30万を集めてきたことを紹介しました。

国連に展示された署名

「国連軍縮展」核兵器コーナー

「国連軍縮展」核兵器コーナー


5日朝、第1委員会のヤルモ・ビーナネン議長とドゥアルテ氏に「核兵器全面禁止のアピール」署名102万人分を提出することに。実際に手渡したのは全国766の市町村長、97の副首長、557の地方議会議長、42の副議長、131の教育長の署名で、新婦人が集めた30万を含む102万人分は目録と、東京での積み上げ集会の写真を提出しました。
署名のツインタワー

署名のツインタワー


その後、国連総会議場入口に設置された「国連軍縮展」へ。核兵器コーナーにうずたかく積まれた署名の“ツインタワー”がありました。平和市長会議や日本原水協が提出してきた核兵器禁止条約をもとめる署名です。被爆者の証言や市民社会のとりくみもビデオで流されています。総会に出席する各国代表は必ずここを通ります。市民の声と行動が監視していることを実感せざるを得ないのではないでしょうか。

各国政府に要請 署名が核軍縮の世論を動かしている

核保有国イギリスの代表と

核保有国イギリスの代表と


代表団はロシア、イギリス、フランスの核保有国含め11カ国の政府代表と面会、要請しました。私は持参した新婦人の署名を渡し、どこでも感謝の言葉とともに受け取ってもらえました。共通して言えるのは、スイスの政府代表が「条約はベストの解決策」であるといったように、核兵器をなくすには禁止条約しかないというのが合意になりつつあり、核保有国も賛成か反対かと問われれば「ノー」とは言えない状況になっているということ。第1委員会の発言でも、核軍縮が進まないのは一部の核保有国のかたくなな態度であり、「政治的意思」の発揮をもとめるという指摘がくりかえされました。
この点で私たちの課題は、日本政府の態度です。第1委員会でも日本政府は「条約」にはひとこともふれないままでした。私たちの運動が国際政治を動かしていることを力に、日本政府に迫る運動を強めなければならないとあらためて痛感しました。

交流 うれしい再会とあらたな出会い

訪問中、アメリカの団体との交流の機会がありました。一つは国際サービス労組(SEIU)1199支部と、もう一つは草の根・平和団体です。
SEIU1199 支部との交流会には、環境保護の立場から原発反対の活動もしているリバーキーパーの代表も参加。交流会当日の5日は、ウォール街の連帯デモが予定され、1199支部も総出 で参加するということでした。

ヒュン・リーさん、ジュディス・ルブランさん

ヒュン・リーさん、ジュディス・ルブランさん


7日はアメリカの平和団体との交流会。世界大会や日本平和大会でおなじみのアメリカフレンズ奉仕委員 会のジョセフ・ガーソンさん、ピース・アクションのジュディス・ルブランさんとアリシア・ゴッズバーグさん、おばあちゃん平和旅団のニディア・リーフさん が準備。2004年に女性平和基金で世界大会に参加したアリス・スレーターさんはじめ地元から15人を超える活動家たちが参加しました。
交流会で私は、新婦人の署名行動は対話をひろげる道具であり、NPT再検討会議をめざすとりくみが地域をかえてきたこと、震災と原発事故後、被災者救援の活動のなかで署名があらたにひろがっていること、「子どもたちを放射能から守ろう」と若い母親たちを先頭に全国で行動が起こっているいること、持続可能な社会について人びとが考え始めていることを報告しました。
ガーソンさんからウォール街占拠行動、外交の専門家や議会のなかで米海兵隊の沖縄駐留や普天間基地移設の見直しの議論が出ているという新しい動きなどの報告があり、日本の青年たち含めそれぞれのとりくみを紹介し合いました。
新婦人にとってあらたな出会いもありました。震災後、私は、アジア・パシフック・フォーラムというニューヨークの独立系ラジオ局から女性団体に現状を聞きたいと、電話取材を受けました。そのときのヒュン・リー記者と会い、宮城から参加していた代表団メンバーへのインタビュー収録に同席しました。
私のラジオインタビューを聞いた学生向けのドキュメンタリービデオを作成している「サード・ワールト・ニュースリール」のスタッフで日系女性のJTタカ ギさんが、新婦人の活動や震災後の日本の状況について語ってほしいということで、スタジオで録画をしました。
世界と連帯し、草の根で行動する新婦人の活動が注目されていると実感しました。

格差ノー ウォール街行動に連帯

全米はじめ世界に支援と共同がひろがる、若者を中心にした「ウォール街を占拠しよう」行動は、私たちがニューヨークを訪れた時点で、3週目に入るところでした。
拠点のリバティ広場(ズコッティ公園)は寝泊りを続ける若者たちと労働組合や平和・人権団体など支援者、メディア、観光客でぎっしり埋まっていました。私たちも横断幕やポスターを掲げ、「核兵器の廃絶を訴えに国連に来た」と言うと、たちまち囲まれ握手攻めに。

“自由市場終わらせよう”などと書いたプラカードを持って

“自由市場終わらせよう”などと書いたプラカードを持って


広場には、メディア受付や案内デスク、書籍市や古着市、食堂など、お祭りのよう。車座で議論をしている人たち、音楽を演奏している人たち、絵を描いている人、プラカードを高く掲げてアピールする女性や帰還兵の会…と、思い思いの意思表示で活気にあふれています。
足元には要求が書かれた段ボールがずらり。共通のスローガンは「私たちは99%」。多大な戦費を使って他国の人びとの命を奪い、国内の教育・雇用・社会保障を切り捨て格差と貧困を広げる一方で1%の人に富が集中する、いまの経済と政治のあり方そのものに〝ノー〟を突きつける行動。「階級戦争だっ!」などドキッとするようなスローガンもありますが、ここではすべて全員参加の「総会」で決定し、非暴力に徹することを合意しているそうです。
広場は、2001年の同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービルの跡地のすぐ近くで、一角には犠牲者を悼み、メッセージや果物などが置かれたコーナーがあり、私も平和への思いを込めて沖縄連帯絵葉書を置いてきました。
昨年、新婦人が呼びかけてニューヨークで開いた女性の交流会で、ジュディス・ルブランさんが「アメリカ市民に、沖縄や世界各地におかれた米軍基地が人びとに与えている痛みを知らせなければ」と発言したことを思い出しました。若者が政府の政策が自分たちと世界に何をもたらしているのかに目を向け、疑問の声を上げ始めているこの行動は、大きな社会運動に発展する可能性を秘めているのではないか、そんなことを思いながら広場を後にしました。これから1%の人々はどうこたえていくのか、注目されます。
 

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