地球発 2012年3月号
新婦人国際部長 平野 恵美子
国際女性デーの3月8日、韓国の日本軍「慰安婦」問題の被害女性、金福童(キム・ボクドン)、吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニ(おばあさん)が、支援団体の韓国挺身隊問題対策協議会(挺隊協)の尹美香(ユン・ミヒャン)常任代表らとともにソウルで記者会見を開き、日本政府から賠償金が支払われた場合、アフリカ・コンゴ民主共和国の内戦による性暴力被害女性を支援している「フィールズ・オブ・ホープ(希望の地)」に全額寄付することを発表しました。日本の侵略戦争を美化し加害の事実を否定してきた勢力は、ハルモニたちの訴えを「金目当て」のものだと、人権侵害の発言を繰り返してきました。
今回の発表は、ハルモニたちの願いが正義を実現し自らの尊厳と人権を回復すること、世界から性暴力をなくすことであるということを、はっきりと示すものです。
賠償は実現していませんが、ハルモニたちの思いを受けて、挺隊協は「ナビ(蝶)基金」を設立、募金など支援を開始します。まずキム・ハルモニが募金をしました。「戦争と女性の人権博物館」が開館する5月5日に、第1回目の寄付の受け渡しをします。「希望の地」は、自らも被害者でありながら支援に立ち上がった女性が始めたもの。ハルモニたちは国連はじめ世界各地で性暴力根絶を訴えてきました。キム・ハルモニがドイツを訪れた際、コンゴ大使から話を聞き、ハルモニたちの活動がコンゴの被害女性たちに希望を与えていると激励されたことが、基金設立につながりました。
3月2日、尹美香さんが来日。院内集会と市民集会(「慰安婦」問題解決全国行動2010主催、戦時性暴力問題連絡協議会協力)で、昨年12月に1000回を迎えた水曜デモや、ソウルの日本大使館前に少女像「平和の碑」を立てたとりくみ、韓国憲法裁判所の判決を受けた韓国政府が日本政府との協議に向け、確固とした決意で臨んでいることなどを報告。協議に応じない日本政府は、その外交姿勢が国際的に大きく問われます。高齢のハルモニたちに残された時間はわずか。日本政府が真摯な解決をすることは、ハルモニたちの尊厳だけでなく自らの名誉を回復することでもあります。私たち日本の女性、国民の責任ではないでしょうか。