新日本婦人の会は3月19日、農水省の「食料・農業・農村基本計画」(案)に対して、正味5日間という極めて短いパブリックコメント募集への抗議を含め、意見を提出しました。
2025年3月19日
新日本婦人の会会長 米山淳子
新たな「食料・農業・農村基本計画」(案)への意見
最初に、「広く国民の意見を検討・反映させる観点から意見を募集する」ためにおこなわれるパブリックコメントであるにもかかわらず、本件の募集期間が正味5日間ときわめて短く、「国民の意見を聞く姿勢がない」「パブリックコメント実施という既成事実をつくるためだ」と批判されても仕方がないものです。強く抗議します。
昨夏に顕在化した主食の米不足、あらゆる食料品の高騰は、生活困窮者はもとより多くの国民の暮らしを圧迫し、食料増産と農業への関心は高まっています。
そのなかで食料・農業・農村基本計画(案)は2030年目標の耕作面積はほとんど増やさないにも関わらず、単位当たりの収量を増やし、「供給カロリー」の食料自給率を45%(2023年は38%)に増やしています。しかし例えば大豆はこれまで実績がないほど多くの収量に設定されるなど、実行性に疑問符がつくものです。
また「摂取カロリー」の食料自給率は53%(23年は45%)に向上させる計画ですが、基準となる1人当たりの1日摂取カロリーを現在の2200キロカロリーから1850キロカロリーに引き下げており、数字のごまかしであり、到底認めるわけにはいきません。現在、6~11歳女児でも1人当たりの1日摂取カロリーは1400~2000キロカロリーとされ、新しい基準は飢餓すれすれの水準にするものです。
食料問題は命に直結する重要な課題です。紛争や戦争が多発する世界情勢や気候危機、人口増大のなかで食料を他国に依存し続けるのはきわめて危険です。食料安全保障を掲げるのであれば、就農者の減少や高齢化のなか、新規就農者への支援を手厚くし、中山間地をふくめ生産の多くを担う家族的農業が持続可能となるよう、国を挙げて支援し、抜本的に増産を図る計画に変更すべきです。
記
1、短期間のパブコメに重ねて抗議するとともに、今後二度とこのようなことがないよう責任ある対処をおこなうこと。
1、輸入依存、輸出拡大政策をやめ、家族的農業をふくむ多様な農家に国の責任で直接所得補償、価格保障をおこない、増産をはかり、消費者への国産食料の安定供給、価格の安定化を図る計画に改めること。
1、米は需要減とせず、増産を図ること。
1、耕作地の単位当たりの収量は実現可能なものとし、食料自給率算出において基準となる1人当たりの1日摂取カロリーは、従来の2200キロカロリーとし、食料自給率向上を図る計画とすること。
1、米を含む備蓄食料を増やし、柔軟で透明性の高い運用を計画に盛り込むこと。
1、新規就農者へ財政を含む手厚い支援をおこない、担い手を増やす計画を明記すること。
1、すべての人が食料にアクセスできるよう、国の責任で諸外国のような食料支援制度の創設を計画に明記すること。
以下からPDFでダウンロードできます。
新たな「食料・農業・農村基本計画」(案)(PDF)