[意見の趣旨]
「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」は、生活保護の口頭申請等について変更がないことを省令、通達等に明記し、「いわゆる『水際作戦』はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底する」とした「生活保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」や、今後も「運用は変わらない」という国会での政府答弁を骨抜きにしています。違法な水際作戦を合法化し、保護制度の利用資格がありながら利用を萎縮しかねず、申請権を侵害する内容になっていることに強く抗議し、省令案の抜本的修正を求めます。
[意見の理由]
(1)保護の申請について
省令(案)では、申請の方法は「申請書を提出しておこなう」ものとされていますが、申請の意思があれば口頭による申請も認めるというこれまでの政府答弁や、附帯決議にある「申請行為は非要式」、つまり要式にとらわれず口頭申請も認めるということと矛盾しています。
また、口頭申請は「身体上の障害がある」「特別な事情」以外は認められないと読める内容になっており、「申請方法がこれまでより厳格化されることはない」という政府答弁に反し、明らかに現行の運用基準を後退させ、申請を締め出すものです。
(2)扶養義務者に対する「通知」と「報告の求め」について
政府答弁では、親族など扶養義務者に対して生活保護の申請があったことを通知し、扶養義務者から所得や連絡先などの報告を求めるのは、極めて例外的な場合に限るとしていました。「親族への扶養義務の照会をしなくても保護が受けられる」「扶養義務者が扶養しなくても生活保護は給付される」ことも確認されています。また、扶養義務者に調査や通知がされることが前提とされることで「申請を躊躇したり、その家族関係の悪化を来したりすることのないよう」という附帯決議もあります。
ところが、省令(案)では、きわめて限定的な「例外」以外は「通知」と「報告」を求めるという、政府答弁とはまったく逆転したものになっています。これでは扶養義務者との関係から申請を躊躇する事態を招きかねません。
(3)費用の支払の申し出等について
保護費から徴収金が差し引かれる場合、「生活を維持することができるよう配慮する」と「配慮」しさえすればよいというのではなく、むしろ差し引く場合も「生活の維持に支障がない」具体的な基準を規定すべきです。
「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に対する意見