2015年2月18日 声明・談話・要請など

【パブリックコメント】「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメント」を提出


新日本婦人の会中央本部

 

【省令案等への意見】
安倍政権は「教育再生」で、「海外で戦争する国」「世界で一番企業が活動しやすい国」を支える「人材」づくりをすすめ、国が定める「道徳性」を自ら受け入れ、実践する子どもを育てるために、「省令案」「学習指導要領案」を改定しようとしています。「省令案」「学習指導要領案」が示す方向は、子どもは成長・発達の主体であり、幸福追求や思想・信条の自由などの権利の主体であるとする日本国憲法と子どもの権利条約の精神に反するもので、ぜったいに認められません。
1、「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案」は、さらに国家統制を強めることになり、反対です
「省令案」は、従来の道徳の時間を「特別の教科」として位置づけるために学校教育法施行規則を変え、「『道徳』を『特別の教科である道徳』と規定する」としています。「特別の教科」として位置づけることは、国の介入を強化した学校教育法や学習指導要領に基づいた教科内容に拘束され、今まで以上に道徳教育に対する国家統制を強めることになり、反対です。
道徳教育に検定教科書が使われることも問題です。道徳ではこれまでさまざまな副読本を使うなど幅広いとりくみができました。しかし昨年、教科書検定基準が改定され、愛国心を定めた改定教育基本法に照らし、重大な欠陥があれば「不合格」にできることで、教科書会社は愛国心を強調した教科書をつくらざるを得なくなりました。また、国家が推奨する特定の道徳的価値を子どもに押し付け、憲法や子どもの権利条約が保障する思想・良心の自由や意見表明権などを侵すことは火を見るよりも明らかです。
「省令案」で、評価については中央教育審議会答申により、「数値などによる評価は不適切」としていますが、児童生徒の作文やノート、発言や行動などで「多面的、継続的に把握し、総合的に評価していくことが必要」としています。この評価法は子どもの内心や人格そのものを「評価」の対象とし、それに優劣をつけることになり、たいへん問題です。また子どもの内心に立ち入らないで「評価」するとなれば、子どもの外見的な意欲や態度で評価せざるをえず、教師による主観的・恣意的になる恐れや、評価を気にして「いい子」を演じる子どもが出てくることも考えられます。評価と検定教科書で教師と子どもをしばる「省令案」に反対です。
1、「省令案」を具体化した小学校・中学校学習指導要領案は、憲法・子どもの権利条約が保障する権利の侵害であり、反対です
小学校、中学校の学習指導要領案(総則)では、道徳教育の目標を「教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、自己の生き方を考え、主体的な判断のもとに行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」こととし、目標達成のために、「道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行う」とされ、校長の方針の下に道徳教育推進の中心となる「道徳教育推進教師」が新たに置かれることが明記されています。
これは、学校長によるトップダウンで学校現場を「道徳教育」でがんじがらめにし、教師の自主性や創意ある豊かな実践を失わせ、子どもたちの多様な考えを認めないものです。憲法と子どもの権利条約は、個々人の価値観や生き方が多様であることを前提に、市民的道徳心は、自らの判断で選びとるもので、これに国家が介入することを禁じています。公教育としての道徳教育は、子どもたち一人ひとりが、多様な生き方や考え方を探求して自分なりの価値観を確立することを目的とするもので、憲法、子どもの権利条約が保障する権利を侵害するものであってはなりません。「省令案」を具体化した学習指導要領案に反対です。
1、「特別の教科 道徳」の内容、指導計画、内容の取り扱いなど、こと細かく定められ、「考え、議論する
道徳」ではなく、教師、子どもをしばるものになっており、反対です
学習指導要領案の「道徳科」の内容が「善悪の判断、自律、自由と責任」「正直、誠実」「節度、節制」や「規則の尊重」「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」など22項目にも及び、各学年で「全て取り上げること」と指導計画が明記され、今まで以上に国家が定めた価値観を押し付けられることになります。とくに「多様な見方や考え方のできる事柄について、特定の見方や考え方に偏った指導を行うことのないよう」と強調していることは問題です。平和や憲法に関する授業を「偏向」と攻撃する動きが強まっている中、憲法について扱った教師が「指導要領に反する」とされる可能性があります。憲法99条では公務員の憲法尊重擁護の義務が明記されており、「偏向」とみること事態おかしなことです。「国や郷土を愛する態度」が含まれていることも問題です。「海外で戦争する国」づくりを推進する安倍政権のもと、戦前のように子どもを戦争にかり立てるための「愛国心」が押し付けられることにつながります。文科省は道徳の「教科化」で「考え、議論する道徳を促すもの」としていますが、「省令案」「学習指導要領案」は国が規定する価値を押し付けるもので、これと矛盾します。撤回しかありません。
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメント
 
 
 

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