新日本婦人の会
■運動と自治体の努力で広がる助成制度
新日本婦人の会は1968年以来、「乳幼児医療を無料に」「子ども医療費無料を国の制度で」と、各地で医師や医療団体などとの共同をひろげながら運動してきました。現在も、対象年齢の引き上げや窓口無料(現物給付)などを求めて、各地方議会に向けて請願署名を集め、議員への要請や首長との懇談をすすめ、「小学卒業までが中学3年に」「小学2年までが18歳に」など、一気に拡充したところも生まれています。
厚生労働省の最新調査(2014年4月1日現在)をみても、この1年間で、通院が「15歳年度末」までが99増えて930市区町村(53.4%)、「18歳年度末」が46増えて201市区町村(11.5%)など、大きく前進しています。
その背景には、子育て世代の深刻な暮らしの実態と切実な願いがあります。実質賃金が下がり続け、子どもの6人に1人が貧困状態にあり、「生活費を切り詰め、切り詰め…、少々の風邪ぐらいはがまんさせている」などの声があふれています。あわせて、少なくない地方自治体が、地域経済の衰退やさまざまな困難を抱えながら、「子育てしやすいまち」「子育てを応援するまち」をかかげ、対象年齢引き上げの努力をしています。
■一方で大きな課題も
このような大きな前進がある一方、所得制限、自己負担、償還払いなど急ぎ解決すべき問題もあります。子育て世帯からは「楽に暮らしているわけではないのに無料の対象にならない」「月3000円までの自己負担はつらい」「お金が手元にないときは病院につれていけない」など痛切な声が上がっています。厚労省の先の調査でも、所得制限がある市区町村が369(21.2%)、一部自己負担がある市区町村が756(43.4%)にのぼっています。自治体は理由として、「患者が増えるから必要」「窓口無料にすると国からペナルティーを受ける」「財政難」などをあげています。
■今こそ国の制度創設を
<国の制度でこそ>
閣議決定された少子化社会対策大綱(2015年3月)では「結婚や子育てしやすい環境となるよう、社会全体を見直し、これまで以上に少子化対策の充実を図る」と明記されています。それならば、国として子どもの医療費無料制度の創設をただちに決断すべきです。「住んでいる地域によって助成が受けられる人、受けられない人が出るのはおかしい」「どの子も安心して医療が受けられるよう、国が保障して」との声は全国共通であり、当然の願いです。
5割近くの自治体が、国の責任で無料制度創設を求める意見書を採択し、2度、3度と意見書をあげている自治体もあります。国の制度ができれば、自治体が独自におこなってきた制度をさらに前進させることが可能となります。
<足かせとなっているペナルティー>
国が窓口無料にすると医療機関を受診する患者数が増える(波及増)として、“増えた医療費”については、国民健康保険の国庫負担を減額するという、いわゆる「ペナルティー」は、どこでも問題となっています。このペナルティーによる国庫負担の削減は全国で約380億円(2012年度)にのぼります。全国知事会や地方自治体からも強い改善の意見が上がっています。2009年に中学卒業まで医療費を無料にした群馬県では、虫歯や慢性疾患の子どもの治療も、早期受診と定期的な通院によって重症化の防止につながっています。国も「波及増」があるとは認めていません。
<税金の使い方を変えて>
税金の使い方を変えれば財源はあります。就学前まで無料にするためには2400億円必要とされていますが、5兆円もの巨額の軍事費の5%を削るだけですぐにでも財源を生み出すことができます。国は子どもの権利条約の「締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての子どもの権利を認める」(第24条)立場から、子ども医療費無料化のためにお金を使うべきです。
■私たちは要求します
1、国は子ども医療費無料制度の創設をただちに決断すること。当面就学前、さらに中学卒業までをめざすこと
1、国はいわゆる「ペナルティー」をただちに中止し、地方自治体の子ども医療費への助成制度を応援すること
【提言】 どの子も無料で安心の医療を受けられるよう、国の制度の創設を