新日本婦人の会
会長 笠井貴美代
政府は、2014年4月11日に閣議決定した第4次エネルギー基本計画に示された方針に基づき、エネルギー需給構造(エネルギーミックス)の将来像 を、この6月頃に提示するとしています。今年1月から「現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像について検討するため」として、総合資源エ ネルギー調査会基本政策分科会の下に長期エネルギー需給見通し小委員会を設置し、議論がハイピッチですすめられ、5月連休明けにも決定がおこなわれるとい われています。
新日本婦人の会は、「エネルギー基本計画」策定に向けたパブリックコメント(13年12月)を提出し、「『エネルギー基本計画』政府案の撤回を求める」 (14年3月)、「閣議決定に抗議し、撤回を求める」(同年4月)など、国民的議論なしに国のエネルギー政策を決定する政府に対し抗議し、要請を重ねてき ました。
レベル7の福島第一原発事故から4年をすぎてもなお、収束の目処も立たず、12万人が県内外に避難を余儀なくされ、廃炉へむけた作業も混迷をきわめていま す。しかし、政府は電力会社の再生可能エネルギー買い取り価格制度の見直し、原子力規制委員会の審査による「適合」判断での再稼働許可など、企業や家庭が 進める再生可能エネルギー普及や温暖化対策を無視し、原発再稼働への動きを急速に進めようとしています。
こうしたなか、4月14日、福井地方裁判所が高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、昨年5月の大飯原発3、4号機運転差し止め判決に続き、再稼働 を差し止める仮処分決定をおこないました。原子力規制委員会の新基準についても、「新規制基準は緩やかに過ぎ、適合しても安全性は確保されていない。新基 準は合理性を欠く」と指摘。この新基準は放射性物質が漏れ出す重大事故を想定しながら、一番重要な住民の避難計画を審査対象外としています。政府は福井地 裁の判決を真正面から受け止め、原発再稼働を中止し、「原発ゼロ」を決断すべきです。
審議が進められている長期エネルギー需給見通し小委員会では、石炭火力発電を国内外で増やす資料が出されましたが、計画されている石炭火力発電がすべて動 き出せば、排出量は大幅増加になってしまいます。また、原発再稼働中心で省エネルギーと自然エネルギーの普及が少ない資料が出されるなど、これで温暖化対 策を広く議論し、積極的目標が出せるのかと、疑問の声も出されています。
政府は「原発ゼロ」を決断し、地球温暖化防止へ、エネルギー政策を抜本的に転換し、再生可能エネルギーへのシフトを進めるべきです。多くの先進国が 2030年40%以上の再生可能エネルギーを目標に決め、欧州全体で45%、米国カリフォルニア州は50%です。そして、今年末の気候変動枠組条約締約国 会議(COP21)で、気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑える世界の削減合意をめざし、世界第5位の温室効果ガス排出国日本が大幅削減目標を掲げ、先 進国としての責任を果たすべきです。
以下、つよく要望します。
1、2030年に温室効果ガス排出量を1990年比で40~50%削減する目標を提出すること。産業革命前からの気温上昇2℃未満を日本の目標に入れること。
2、その裏づけとして、2030年にむけて、省エネ、再生可能エネルギーの積極的な目標、石炭火力発電所の削減・廃止などの抜本的対策をとること。
3、すべての原発廃炉へ、高度な技術と人材の投入による一大国家事業としてすすめること。
4、エネルギーミックスを経済産業省の審議会だけで議論せず、研究者・NGO・市民の提案を幅ひろく取り入れ、「原発ゼロ」が多数の国民参加の議論で、気 温上昇2℃未満の温暖化対策を前提に、広く議論すること。「意見箱」に寄せられた意見の取り扱いも含めて国民の声を反映させること
「原発ゼロ」、省エネ・再生可能エネルギー中心にエネルギーシフトし、温暖化対策抜本強化の温室効果ガス削減目標を求めます