2012年12月8日 アクション

第11回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議への報告

新日本婦人の会

私たち新日本婦人の会(新婦人)は、国連経済社会理事会の特別協議資格をもつNGOとして、核兵器廃絶、女性・子どもの権利、平和のための世界の女性との連帯を目的に掲げ活動しています。1962年に創立し、今年50周年を祝いました。地域や職場に約1万の班、880の市町村に支部、47の全都道府県に本部があります。
国連の世界女性会議や国連女性の地位委員会などに参加、女性差別撤廃条約や北京宣言と行動綱領はじめジェンダー平等・女性の権利に関する国際合意の国際、地域、および国内レベルでの実施の推進にとりくんでいます。国内においては、約15万の会員がこうした国際合意を学び活用しながら全国の地域や職場で要求実現にとりくみ、さまざまな個人、団体とも協力して草の根の女性の声と要求を自治体や政府に届けています。今年創立50年をむかえるにあたり「憲法とジェンダー視点でつくりかえよういのち守る社会に」をテーマに、全国と連帯してそれぞれの地域で多くの女性たちとつながり、行動してきました。
新婦人は、日本軍「慰安婦」問題を、女性の人権、人間の尊厳回復の課題であり、侵略戦争を行った加害国の責任を果たす課題として重視し、とりくんでいます。「慰安婦」問題の被害女性がもとめている、公式謝罪と賠償、歴史の事実の記録と継承という方向での1日も早い解決のために、会独自としても、また、売買春問題ととりくむ会や国際婦人年連絡会、戦時性暴力問題連絡協議会などと共同して活動しています。日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議には第1回に代表を派遣、第2回、第7回、第8回、第9回、第10回と参加を重ねています。
<日本の政治状況について>
日本では、11月16日の衆議院解散を受けて12月4日に総選挙が公示され、16日に投票日をむかえますが、いま、危険な動きが強まっています。
民主党は、2009年の政権交代時に掲げた主要な公約を投げ捨て、自民党となんら変わらなくなってしまいました。野党時代に「慰安婦」問題解決のための議員立法に積極的に動いていた民主党が政権についたことで、解決に向けて大きく前進をと、私たち女性団体は働きかけを強めていました。しかし、結局それまでの政権の「解決済み」との態度をかえることはなく、韓国政府からの協議申し出にも応じず、韓国やアメリカに建てられた慰安婦の「碑」の撤去をもとめたり、韓国と日本の人々の寄付でソウルに建てられた「戦争と女性の人権博物館」の内容に抗議を行うなど、国際的にも批判を浴びています。
自民党や新しく結成された日本維新の会はいずれも、アジア諸国やアメリカの大手メディアや政府元高官などが懸念を表明しているように、領土問題も利用しながら、憲法改悪・集団自衛権の行使を公約に掲げ、日本の核保有にさえ言及するなど、戦前のような軍事国家に日本を戻そうとする反動的な主張を特徴としています。
自民党の安倍晋三総裁はかつて、女性差別撤廃条約を諸悪の根源と言い、首相時代には「慰安婦」の強制連行の事実はなかったといって内外から批判を浴び、このことが辞任のひとつの要因にもなった経緯があります。しかし今回再び完全に破たんした「強制性はなかった」論を繰り返し、河野談話見直しを主張しています。日本維新の会の代表・石原新太郎前都知事も、代表代行の橋下徹大阪市長も、安倍氏と同様の主張をしています。
こうした勢力が台頭するもとで、9月7日に大阪市議会が「慰安婦」問題は解決済みとする意見書を、10月11日には宮城県議会が、「慰安婦」問題は存在せず、事実誤認による過去の政府要人らの発言を取り消すようもとめる意見書が可決するなど、自治体レベルでバックラッシュ派の巻き返しが強まっています。
一方で、「慰安婦」問題を単なる2国間の政治問題としてではなく、国際的人権の問題として、こうした右傾化の流れに警告を発する論調も、一部で出ています。
国際的な流れは、女性の人権・ジェンダー平等の推進、あらゆる問題の平和的解決、軍事力による国家の安全保障から貧困の根絶・社会サービスの向上による人間の安全保障への転換、貧富の格差是正へと向かっています。こうした流れとまったく逆の方向に向かおうとする勢力が日本のかじ取りをすることになれば、日本は世界の中で孤立を深めるだけです。
<今後の活動について>
新婦人は、どのような政権になっても、引き続き、他の女性団体やネットワークとの共同を強め、1日も早い立法による「慰安婦」問題の解決へ行動します。
「慰安婦」問題が解決しない最大の理由は、戦後日本で政権を担ってきた勢力が、過去の侵略戦争の事実を認め、その反省に立って生まれた日本国憲法を全面的に生かす立場にたっていないことです。さらに、人権や女性に対する暴力の分野での国際的な到達にも学ぼうとせず、先進国でありながら、ジェンダー格差指数では毎年後退し、現在135か国中101位という状況も、大きな要因です。意思決定への女性の参加が圧倒的に低く、国会議員は11パーセントと世界平均の19パーセントにさえ遠く及ばない現状が、女性含め社会的に弱い立場にある人々の声を反映した政治が実現できない原因となっています。いま強まっている平和と人権を脅かす動きにたいし、私たち日本の女性は、平和と正義をもとめるアジア諸国はじめ世界の女性・市民と連帯し、草の根の力を集めてたたかっていく決意です。
<新婦人のとりくみ>
新婦人は、署名提出など政府や国会への要請とあわせて、地域で「慰安婦」問題を学び知らせ草の根から行動を起こそうと活動しています。
・週刊の機関紙「新婦人しんぶん」や月刊誌「女性&運動」で最新の情勢やとりくみを紹介。
・2009年に発行したパンフレット「日本軍『慰安婦』問題解決のために」の改訂版を発行(2012年4月)、合計で約1万5000部を普及し学習に活用。
・「アクティブ・ミュージアム女たちの戦争と平和資料館」沖縄展を各地の会員が見学。
・各県や支部から韓国や中国への平和ツアーや、沖縄の宮古島や大阪の大東市など国内にある日本軍「慰安婦」の碑訪問などフィールドワークや、学習会を実施。
・中央本部として、2012年5月に南京を訪問、南京大虐殺記念館の朱成山館長と「慰安婦」問題について意見交換。2013年2月に韓国スタディ・ツアーを予定。
・2011年12月の水曜デモ1000回連帯アクション・外務省包囲行動はじめ、共同行動への参加。
・日本政府に対し立法による解決を求める自治体の意見書採択の運動(現在39自治体)
・教科書採択にあたって、侵略戦争を美化する教科書を採択させないように、各地域で自治体へ意見提出
・国連女性の地位委員会、女性差別撤廃員会、人権理事会など国際機関にこの問題に関する報告や情報を提供。

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