新婦人は内閣総理大臣あてに、【要請書】安倍首相に「緊急事態宣言」発令の権限を与える危険な新型インフルエンザ等特別措置法「改正」につよく反対します を送付しました。
内閣総理大臣 安倍晋三 様
安倍首相に「緊急事態宣言」発令の権限を与える危険な新型インフルエンザ等特別措置法「改正」につよく反対します
2020年3月6日
新日本婦人の会
会長 米山 淳子
安倍首相は4日、新型コロナウイルス感染の急拡大を抑えるためとして、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正への協力を野党各党党首に求め、10日に閣議決定し、来週中にも成立させたいとしています。しかし、法「改正」は重大な問題と危険なねらいをもっており、私たちはつよく反対します。
今回の新型コロナウイルス対策でも安倍首相は、現場や専門家の意見も聞かず、突然の「学校一律休校」で社会を大混乱させ、クルーズ船の乗客や乗務員の集団感染に対する誤った対応、いつまでも整わないPCR検査体制、今にいたっても感染者数などの実態が把握できないなど、行き当たりばったりの「政治決断」に国民は振り回されています。しかも、この7年余、安倍首相はウソとごまかし、文書改ざん、勝手な法解釈、忖度がはびこる異常な政治状況をつくってきた張本人です。今回の法「改正」の最大の目的は、安倍首相が「緊急事態宣言」の権限を手に入れることであり、これほど危険なことはありません。
そもそも、2012年の新型インフルエンザ等対策特別措置法は、制定当時、適用要件もあいまいで、集会、言論、表現、移動の自由など、各種の人権に対する過剰な制限がされるおそれがあるとして、日本弁護士連合会などの法曹界や政党では日本共産党が反対していました。
その特措法では、政府対策本部長である内閣総理大臣が「緊急事態宣言」を出し、都道府県知事の権限で「住民への外出自粛要請」「学校や社会福祉施設などの使用停止の要請」「イベントの開催制限の要請、指示」「臨時の医療施設用の土地・建物の強制使用」「鉄道、運送会社などへの医療品や食品などの運送要請、指示」「医薬品や食品などの売り渡し要請、強制収用」などができると定めています。安倍首相は、同法に新型コロナウイルス感染症を加え、2月1日から2年間の時限措置とする「改正」案を検討しています。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対して、早くから医療の専門家やメディアなどから、新型インフルエンザ等対策特措法には「等」が入っているので、すぐにも現行法で対策すべきとのつよい声が出ていました。厚労省が2月18日、現在の特措法にもとづく実施要綱を改正し、政府の備蓄品を新型コロナ対策にも使えるようにしていたことも明るみになっています。
それでも、無理を通して、安倍首相が特措法を「改正」したいわけは、新型コロナウイルス感染対策で国内外から出ている厳しい批判をかわし、「強いリーダーシップ」を見せたいからです。また、自民党のなかでも「緊急事態条項で改憲論議」をと主張する声が出ているなど、改憲に執念をもつ安倍首相のもとで、改憲をめざし、先行して首相への権限を拡大したいとのねらいも見えてきます。
人権制約への歯止めもあいまいなまま、十分な審議もせず、どさくさに紛れて、安倍首相に「緊急事態宣言」の発動を許す特措法「改正」は許されません。新日本婦人の会は、新型コロナウイルス感染対策には、科学的根拠と実態に即した迅速で大きな財源をともなう具体策こそ必要と繰り返し要請してきました。人権制約への女性や国民の危惧や不安を無視して、「改正」案成立を一気にすすめることなど絶対におこなわないよう、つよく求めるものです。