2010年1月14日 国際活動

地球と人類の未来のために 世界はただちに行動をCOP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)デンマーク訪問から

新日本婦人の会副会長 高橋 和枝

「地球・共生・未来」の日本手ぬぐい、高尾山の天狗でパフォーマンスの公害・地球懇代表団(22人)。シロクマ帽子をかぶっているのが筆者

「地球・共生・未来」の日本手ぬぐい、高尾山の天狗でパフォーマンスの公害・地球懇代表団(22人)。シロクマ帽子をかぶっているのが筆者


コペンハーゲンの各所でにぎやかにデモンストレーション

コペンハーゲンの各所でにぎやかにデモンストレーション


 
 
12月7~19日、デンマークのコペンハーゲンで開かれたCOP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)。
会議には120カ国を超える首脳が参加、メディア関係者5000人、市民・NGOから4~6万人が参集し、この会議にかける期待の大きさが示されました。人類の未来をかけた歴史的会議に日本の市民・女性の声を届け、環境・福祉国家デンマークを知る機会にしたいと公害・地球環境問題懇談会(公害・地球懇)代表団の副団長として現地を訪問(11~18日)した新婦人高橋和枝副会長がレポートします。

 12・12グローバル・アクションデー

グローバルアクションデーの会場で。家族と一緒に参加した、トラのフェイスペイントの男の子

グローバルアクションデーの会場で。家族と一緒に参加した、トラのフェイスペイントの男の子


コペンハーゲンでは史上最高の6~10万人の大デモンストレーション。緑やブルーに統一したり、カラフルな衣装、大地球儀を運ぶ人びと、太鼓を打ち鳴らす集団、シロクマの軍団、自転車で参加する家族やカップルなど、あふれる群衆が国会議事堂前に集まってきます。
私たち代表団は、高尾山の“天狗”と「ノーモア・ミナマタ」を訴える被害者を先頭に横断幕をかかげ、チラシをまきながら出発を待ちました。COP15の会場ベラ・センターに向けてパレードが静かに動き始め、道路いっぱいに人の波が揺れます。「地球・共生・未来」の文字の日本手ぬぐいを大きく広げて歩きます。日本的なパフォーマンスにカメラのフラッシュ、インタビューが次つぎ。

交渉の舞台、ベラ・センター

ベラ・センターの本会議場。ここで各国首脳の演説や徹夜の会議が行われた

ベラ・センターの本会議場。ここで各国首脳の演説や徹夜の会議が行われた


デンマーク入りした翌日、私たちは、すでに各国政府担当者による交渉が始まっているベラ・センターへ厳重な入場手続きをして入場。本会議場やサイドイベント会場、コンピュータ・センターなどに足を運び、ツバルをはじめ深刻な温暖化の被害やその対策を訴える数百のブースを回りました。たくさんの国から、肌の色も言葉も性別も年代もこえて集った人びと。気候変動を食いとめたい一心で行動する仲間の強い連帯意識がわいてきます。
環境大臣レベルの交渉が始まり、各国首脳が続々とコペンハーゲン入りするなか、ベラ・センターでは警備などを理由に緊迫した状況が生まれました。当初許可されていた会場前での日本人参加者によるアクションが急きょ取り消され、NGOの入場・会議傍聴がきびしく制限されました。入場が7000人に限られ、さらに1000人へ、最後の首脳会議・交渉では国際環境NGOの中心メンバーも入れない100人規模にされ、寒風や雪のなか7時間、8時間並んで一度も入場できない人が多数にのぼりました。「NGOの参加を重視してきた気候変動の交渉プロセスの一番重要な会議でこのような事態が起こるのは非常に残念」との抗議があがりました。

気候フォーラム09 民衆サミット

コペンハーゲン中央駅近くの会場では、ビア・カンペシーナ(農民の道)やFoE(地球の友)など多数のNGOによる「気候フォーラム09―民衆サミット」が開かれ、水や食糧、農業、ジェンダー、先住民族など多様なテーマでの自由なイベントが。私が参加した広場での農民集会やデモ、夜の全体集会は、途上国を食い物にする多国籍企業の実態、森を守る先住民の役割や家族農業の大切さが訴えられ、9㍑の水をバケツで4時間かけて運ぶ途上国の女性の姿と、水をふんだんに使う先進国との不平等さを告発した映像が胸にささりました。新自由主義政策の誤りを告発し、公正な経済と世界を求める、COP15のもう一つの姿がありました。
代表団は“天狗”を先頭に「日本政府は『国内対策での25%削減』と『途上国支援』をおこない、先進国としての責任をはたせ!」と英文で書いた大横断幕をかかげ、8回にわたるパフォーマンス、その様子はアメリカの新聞にも掲載されました。

日本政府・各国政府はただちに行動を

COP15は、アメリカなど主要国がまとめた「コペンハーゲン合意」案をコンセンサス(全員一致)方式で採択できず、「合意」に「留意」するとの表現で承認される異例の結果に。先進国の削減数値目標がない、課題の緊急性にみあった2020年・2050年の削減目標が設定されていない、法的拘束力がないなど、「欠陥だらけ」と指摘される内容です。同時に、不十分ながらも、平均気温の上昇を2℃未満にすべきことが認識され、2013年以降の途上国への資金援助を具体的に約束、この1月末には先進国が2020年の削減目標を提出し、途上国も削減行動を開始することが明記されています。
持続可能な地球と人類の未来にとって、温暖化対策は待ったなし! 先進国と途上国がそれぞれの役割にふさわしく、今年11~12月のCOP16(メキシコ)での法的拘束力ある国際協定の締結めざしてただちに交渉を再開するときです。25%削減を掲げた日本政府はCO₂大口排出源・産業界の確実な削減など国内対策を急ぎ具体化することが求められています。それを迫る力も世論と運動の高まりであり、NGOの役割を改めて実感する機会になりました。

深く根をはる環境政策

原発ノー、風力・バイオマス

日本の九州ほどの面積の平坦な国土に540万人が暮らすデンマーク。1970年代、国民のたたかいで原子力発電を導入しないことを決めた国です。力を入れる風力発電や酪農を生かしたバイオマスなど再生可能エネルギー比率は現在12%。2025年に全エネルギーの3分の1、50年に3分の2をまかない、75年には100%にする目標です。

車窓からみる風車群

車窓からみる風車群


日本では山奥でも目にする自動販売機を、宿泊地のロスキレ市の屋外で見ることはありませんでした。道路・交通政策も人間優先で、日本との違いを痛感しました。

人間優先の道路と自転車

人、自転車、車がすみわけられたロスキレ市の目抜き通り

人、自転車、車がすみわけられたロスキレ市の目抜き通り


道路には信号が少なく、交差点はロータリー方式の一方通行が多く、歩行者がいると車が止まってくれます。
クリスマス商戦でにぎわうロスキレ市の目抜き通りは、両側に歩行者道、その内側に自転車道があり、車道は真ん中に一方通行の1車線のみ。道路のあちこちに自転車置き場があります。コペンハーゲンも中心街に自転車道が整備され、36%の市民が自転車で通勤・通学しています。国鉄や地下鉄の車両に自転車を持ち込む、自転車携行者用椅子席もあるなど、人と自転車が主役になっていることに驚かされます。

一覧へ戻る