新日本婦人の会は、3月11日【要請書】「東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から11年、原発ゼロの決断と、国の責任で生活と生業の復興・再生へ支援を強めてください」「ALPS処理水に関するチラシ配布中止と回収を求めます」を内閣総理大臣らに提出しました。
内閣総理大臣 岸田文雄 様
復興大臣 西銘 恒三郎 様
経済産業大臣、内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)萩生田 光一 様
文部科学大臣 末松 信介 様
環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災) 山口 壯 様
厚生労働大臣 後藤 茂之 様
内閣府特命担当大臣(防災)二之湯 智様
2022年3月11日
新日本婦人の会 会長 米山淳子
東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から11年、原発ゼロの決断と、
国の責任で生活と生業の復興・再生へ支援を強めてください
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11年を迎えました。今も3万8139人(復興庁2022年2月8日現在)が避難生活を余儀なくされ、全国各地で暮らす「自主避難者」も少なくありません。震災関連死は3784 人(同21年9月30日現在)と増え続け、国の生活再建対策の不十分さと遅れは重大です。 政府は除染なき避難解除や避難者・被災者への医療・介護支援の縮小、廃止を進めていますが、被災者の住まい、生業、地域コミュニティーづくりをはじめ、健康でごく普通の生活が送れるよう、政府の責任で一日も早く被災者本位の生活再建支援を行なうよう強く要望します。
政府が昨年、地元との約束を反故にし、ALPS処理水2023年春をめどに海洋放出するとの方針を示したことに、福島の44議会が「反対」「慎重を求める」意見書を採択し、県漁連や農林業、観光業団体のほか、北海道から茨城に至る太平洋沿岸漁業者から強い反対や懸念の声が上がっています。さらに復興庁や経産省が被災地の懸念や課題などに触れないまま、トリチウムなどが含まれるアルプス処理水の安全性をことさら強調したチラシを、各教育委員会を通さず、全国の小中高校に直接届け、活用するよう求めていることに抗議や反発の声が上がっています。
汚染水対策として320億円もの巨費を投じた凍土壁は、トラブル続きで汚染水が発生し続けています。地層や地下水についてきちんと調査し、地質学の専門家グループによる広域遮水壁と集水井による提案も検討するなど、早期に真摯な対応をとるべきです。原発事故で避難を余儀なくされた住民による集団訴訟で、東電に中間指針を超える損害賠償の支払いを命ずる最高裁判決が3件出されました。津波対策不足を指導しなかった国の責任を認めた判決も地裁と高裁合わせ12件(22年2月現在)に上っています。国と東電は完全賠償し、すべての被災者の生活と生業が再建されるまで責任を果たすことが求められています。
大型台風や記録的な豪雨など、温暖化による異常気象が相次ぎ、大地震や火山噴火、豪雪に加え、新型コロナ感染症が広がり、国民の命が脅かされています。このような中で米製兵器爆買いなどの軍備増強や不要不急の大型開発はやめ、防災やインフラ老朽化、医療や復興へ、思い切った体制強化と財政投入をおこなうべきです。さらに社会保障切り捨てや消費税などによる貧困と格差拡大は、復興や感染症対策、防災の妨げとなり、その転換が求められます。以下、強く要請いたします。
<復興支援>
1、国は被災者の生活と生業の復活、再生へ最後まで責任を持つこと。被災自治体が負っている復興事業費の一部は、自治体負担をなくすよう復興財源を確保し、さらに自治体が自由に使える財源もつくること。
1、被災者生活再建支援法の上限を500万円に引き上げ、支給対象を半壊のさらなる拡大、一部損壊まで広げ、被害戸数にかかわらず適用できるようにすること。二重ローン解消へ収入基準を見直し、引き上げること。
1、仮設住宅、みなし仮設からの一方的な追い出しはせず、支援を継続すること。在宅被災者の実態調査、支援を強めること。災害公営住宅への入居資格を緩和し、在宅被災者を含む希望者全員が入居できるようにすること。収入超過世帯も含め、被災者が住み続けられるよう、家賃減免措置等を継続する法制度を整備すること。仮設退去時の備品譲渡は、希望する全仮設入居者を対象にすること。
1、被災者の医療費、介護保険等の一部負担金(利用者負担)の免除継続へ国は財政支援をおこなうこと。
1、被災自治体の職員採用、派遣職員の受け入れにかかる経費の全額を国が負担する震災復興特別交付税による
措置を復興が完了するまで継続し、拡充すること。
1、生活支援員を増員し、仮設住宅や災害公営住宅の被災者、在宅被災者の孤立や孤独死防止、心のケアのための見守りや相談を強化すること。コミュニティーの維持、精神疾患や認知症などへの対応策を強化すること。
1、心のケアを必要とする子どもたちのために、正規教員による1000人の教育復興加配を継続・拡充すること。
養護教諭の複数配置、スクールカウンセラーの全校常時配置、中学校区単位でのスクールソーシャルワーカ
ーの配置、児童福祉司、児童心理司の大幅増員をおこなうこと。
1、災害援護資金の返済は、各人の実情に合わせ、一方的な取り立てはおこなわないこと。
1、生業の再建を希望する企業や事業者に対するグループ補助金等の支援策を継続・拡充すること。補助を受けた事業者をフォローアップし、返済は各事業者の実情に合わせ、一方的な取り立てはおこなわないこと。台風やコロナ禍、漁獲量大幅減で復興が遅れている沿岸漁業・水産加工業に追加の支援をおこなうこと。
1、暮らしに欠かせない住民の足である気仙沼線の全線復旧を、JR東日本の責任で早期に実現するよう国が指導すること。
<原発>
1、原発ゼロをただちに決断し、稼動原発は止め、女川原発を含め原発再稼働、および老朽原発の延命は行わないこと。2030年までに石炭火力発電は廃止し、二酸化炭素排出を50%以上削減(1990年比)させ、2050年には再生可能エネルギー100%とする「エネルギー基本計画」に改定すること。
1、東京電力福島第一原発の廃炉実態に合った工程を公表し、廃炉作業は安全・安心を最優先しておこなうこと。柏崎刈羽原発の再稼動はやめ、福島第一・第二原発の廃炉に集中するよう東京電力を指導すること。福島第一原発事故処理費用は国と東京電力の責任とし、国民負担にしないこと。
1、福島第一原発の地震計故障放置やALPS除去フィルター破損、柏崎刈羽原発でのIDカード不正利用など相次ぐ重大な違反と報告の遅れは許されず、東京電力に速やかな公表と、安全対策を講じるよう指導すること。
1、福島をはじめ全国の原発廃炉事業を国家プロジェクトに位置づけ、作業に従事する労働者の被ばく・健康管理、多重下請け構造を是正し、労働者を直接雇用とすること。
1、福島第一原発で溜まり続けるALPS処理水の海洋放出方針を撤回し、地上保管を継続すること。汚染水を増やさないための地下水流入対策として専門家が提案している「広域遮水壁」等を検討すること。
1、除染による汚染土壌の再利用は行わず、放射性廃棄物の中間貯蔵と最終処分は国が全責任を負うこと。
1、帰還困難区域の、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域も除染すること。
1、「県民置き去り」「惨事便乗型」の「福島イノベーション・コースト構想」を見直し、避難者や県民のくらしと福祉を最優先に復興事業をすすめること。
1、福島県が実施している「18歳以下の医療費無料制度」の財源は国が負担すること。
1、避難者と帰還住民一人ひとりの実情に応じた住まいの確保、生業の再建を支援し、住民が要望する場所や区域の除染をおこなうこと。また、医療や介護、商業施設、公共交通などのインフラ整備をおこなうこと。
1、原発事故避難者への医療、介護保険料を全額免除する特別措置法は、2023年度以降も継続すること。
1、復興庁、経済産業省が作成し、県や市町村の教育委員会を通さずに全国の小中高校に直接配布した、ALPS処理水の安全面だけを強調するチラシは直ちに回収すること。
1、リアルタイム線量測定システム(モニタリングポスト)は、一方的に撤去しないこと。必要な場所には新設すること。
1、原子力損害賠償は、時効を設けず、賠償に応じるよう法制化し、すべての被害者に原発事故がなければ発生しなかった被害や損害は国と東京電力が完全賠償すること。賠償請求の手続きを簡素化し、賠償金は非課税にすること。
<財政施策等>
1、被災地の復興・復旧を大きく妨げる消費税は当面5%に引き下げること。
1、防災対策は「国土強靭化」の名による大型公共事業でなく、住民本位で予防と減災へ重点シフトすること。
1、震災・防災対策や避難所運営などにジェンダー視点をすえ、女性や高齢者の参加を促進し、意見を十分反映すること。被災地復興の新たな町づくりは、女性、高齢者、社会的弱者含め住民の声を反映してすすめること。
経済産業大臣 萩生田光一 様
復興大臣 西銘 恒三郎 様
2022年3月11日
新日本婦人の会会長 米山 淳子
ALPS処理水に関するチラシ配布中止と回収を求めます
昨年12月から今年1月にかけて経済産業省資源エネルギー庁と復興庁は、小学生向けチラシ「復興のあと押しはまず知ることから」(経済産業省作成)と中高校生向けチラシ「ALPS処理水について知ってほしい3つのこと」(復興庁作成)の合わせて230万枚を、県や市町村の教育委員会を通さず、直接各小中高校に送付し、学校や家庭での積極的活用を求めています。
東京電力福島第一原発で発生している放射性汚染水は、ALPS(多核種除去設備)で処理してもトリチウムは残ります。チラシでは「トリチウムは身の回りにたくさんある」「健康への影響は心配ない」「健康に問題はない」などと安全面だけを列挙しています。
昨年、政府はトリチウムが残るALPS処理水の海洋放出の方針を決めましたが、これに対し漁業者の抗議や福島県内の圧倒的多数の議会が「反対」や「慎重を期すよう求める」意見書を採択しているなか、当チラシはこれらの問題点や多くの国民の懸念などについて全く触れていません。
また教育委員会を通さず、国が直接各学校に積極的な活用を呼びかけるのは、教育への政治の不当な介入です。
今回の異例の事態に抗議し、以下要請します。
1、 異例の手順となったことなどを各教育委員会に謝罪し、「復興のあと押しはまず知
ることから」と「ALPS処理水について知ってほしい3つのこと」の各チラシの配布を中止し、国の責任で回収すること。
※データは以下よりダウンロード可能です。