地球発 2012年5月号
新婦人国際部長 平野恵美子
4月30日から5月11日まで、オーストリアのウィーンにある国連事務所で、2015年の核不拡散条約(NPT)再検討会議第1回準備委員会が開かれました。私は、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)が派遣した被爆者2人を含む20人の代表団(4月27日~5月7日)に参加しました。
代表団の目的は、準備委員会に核兵器の全面禁止をもとめる署名を提出すること、日本政府を含む各国政府代表や国連関係者に、核兵器全面禁止条約の交渉開始をもとめること、ウィーンの国連事務所とウィーン大学での原爆展を成功させることです。
草の根の声・155万の署名の力
会議初日、代表団は全国から寄せられた署名154万7979(新婦人40万)の目録と全国929市町村の首長らの署名を、準備委員会のピーター・ウールコット議長(オーストリア軍縮大使)に提出しました。忙しい中の面会に高草木博団長がお礼を述べると、議長は「私自身が受け取りたいと思ったのです」と、自治体首長の現物の署名を見た後、目録の155万という数に驚き、目録を見直して、「150万を超えているんですか」としばし絶句。「署名活動は核兵器のない世界へのとりくみを進めるうえで、大きな力になります。今、核兵器のない世界をもとめる声と行動が広がる中で、世論の圧力が強まっています。政府代表の私たちだけでは達成できない目標です。ともにがんばりましょう」と、代表団を激励しました。
その後議長は、5月2日のNGOセッションの冒頭、「私は一昨日、核兵器の禁止をもとめる154万余の署名と4人の被爆者を通じたメッセージを受け取った」と述べて、市民社会・NGOの役割を強調しました。2010年のNPT再検討会議、昨年秋の国連要請で実感してきた署名の力が、あらためて確信になりました。
注目集めた原爆展
4月30日、原爆展がスタート。国連やオーストリア政府の協力を得て日本原水協、日本被団協、国際平和ビューロー(IPB)の共催で実現しました。(きのこの雲の下で)というテーマで、広島・長崎の被爆の全景写真、日本被団協が新しく制作した写真パネル「原爆と人間」のほか、原水爆禁止世界大会の写真や署名のポスター、被爆者の遺品や折鶴なども展示しました。
原爆展会場は、政府代表はじめ会議参加者が必ず通るロビー。準備の段階から注目が集まります。開会式には政府代表、NGO、メディアなど100人を超える人が参加。あいさつしたブレイネス・インゲボルグIPB会長と若者組織「核禁止時代」のニナ・アイゼンハートさんはともに世界大会と「女性のつどい」に参加した人たち。アメリカのジャッキー・カバソさんやアリス・スレーターさん、フランスのアリエル・ドゥニさんなど、女性平和基金で世界大会に参加し交流してきた女性たちもとうれしい再会となりました。
新しいイニシアチブとかみあった原爆展
「核兵器のない世界」の実現へ新しい動きが生まれています。核兵器使用の人的影響に注目し国際人道法など国際法にもとづいて対応するというもの。2010年のNPT再検討会議の最終文書でも言及され、今回の準備委員会では16か国が連名で「核軍縮の人道的側面に関する共同声明」を発表。それを訴えてきたのは、まさに被爆者と日本の運動です。この新しいイニシアチブが強調され議論された今回の準備委員会の会場で原爆展を開き、多くの人々に被爆の実相を伝えたことは、今後の国際的な流れに決定的な影響を与えるものです。
被爆者とともに、核兵器廃絶へさらに
今回、ウィーン大学での原爆展や被爆者証言など、若者と被爆者の直接の交流も大きな成果を生みました。被爆者の証言を聞いてさらにパワーアップした若者たちの、国連事務所前で「議論ばかりしていないで、行動しようよ」のパフォーマンスに、「核兵器のない世界」をめざす運動は、人類と地球の未来を切り開く力になると、心が熱くなりました。
アメリカの傘の下から出ようとせず、NGOから「核クラブ」の一員とみなされている日本政府をかえるために、草の根の行動をひろげましょう。