新日本婦人の会は、国の中長期のエネルギー政策の方向性を示す、第7次エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメントを全国から出そうと呼びかけました。エネルギー基本計画は、一刻の猶予もならない気候変動に国としてどのように対応するか、極めて重要なものです。1月8日、中央本部は以下の意見を提出しました。
第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見
新日本婦人の会中央本部
<はじめに> 第7次エネルギー基本計画(案)は、論証なしの決めつけが計画案を誤誘導していると指摘せざるを得ません。たとえば、自然資源に恵まれた国であるにもかかわらず、文章の出だしから「我が国は、すぐに使える資源が乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制限を抱えて」いるとしています。世界有数の地震・火山大国であることもふれていません。また、「データセンターやAIにより電力需要が急増する」と決めつけ、それを否定する別の試算なども無視し、最初から結論ありきとなっています。
<野心的な温室効果ガス削減を> 地球温暖化による気候変動で、日本でも毎年のように気候災害が発生しています。産業革命以前と比べ世界の気温上昇を1.5度に抑えるには、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを世界全体で2035年には2019年比で60%削減が必要です。日本は世界第5位の排出大国であり、その責任を踏まえれば、高い水準の削減計画が求められますが、政府案は2013年比で60%削減とし、これを世界標準の2019年比にすると53%という低さです。これまで大量の温室効果ガスを排出してきた先進国として、気候変動対策をリードするために、2013年比ならば35年には75~80%削減をめざすべきです。
<火力発電の廃止> 2040年の電源構成政府案は火力発電3~4割、原発2割、再エネ4~5割としていますが、発電部門で最大の二酸化炭素排出、地球温暖化対策に逆行する化石燃料を使った火力発電を今後も温存し、G7の中で唯一、石炭火力発電の廃止期限を明らかにしないことは重大です。今後も他国の化石燃料、アンモニアなどに依存し続けることは経済的な面からも、安定的なエネルギー供給の観点からもありえず、縮小、廃止に向かうべきです。気候変動対策で決定的に重要な2030年までに石炭火力発電を廃止することを求めます。
<原子力発電の廃止> 東京電力福島第一原発事故以降に掲げてきた「可能な限り原発依存を低減する」との文言をなくし、「原発を最大限活用する」としたことは到底受け入れられません。能登半島地震で北陸電力志賀原発に予想していなかった事故が次々と生じたように、60年を超え稼働させる原発のみならず、地震・火山国の日本で原発を稼働させること自体、極めて危険です。核燃料サイクルは破綻し、自国で処理することのできない使用済み核燃料が増加し続けています。すでに国際的にも批判される大量のプルトニウムを保有しており、これ以上、将来世代に負の遺産を押し付けることはやめるべきです。経済的にも原発新設・リプレースにかかる費用は運営企業だけでまかなえないほど莫大で、安全対策にかかる費用を含めれば最も高価なエネルギーであることは明白です。事故が起こった場合の避難計画も不十分です。ひとたび事故が起きれば深刻な被害が生じ、賠償もけた外れとなります。事故を起こした東電福島原発は今だに廃炉の見通しも立たたないほど、原発事故は技術的困難を生じさせるものです。ロシアによるウクライナの原発が軍事標的にされた例もあり、安全性の観点からも原発は2030年までにやめるべきです。
<省エネルギー、再生可能エネルギーの推進> 政府案は2040年のエネルギー消費削減を2013年比で3割未満としていますが、すでに実用化されている技術普及を強め、省エネルギーは倍以上の6割削減をめざすことが欠かせません。エネルギー消費削減を進めると同時に需要の数倍のポテンシャルがあり、発太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡大にこそ力を入れることが求められています。再生可能エネルギーは発電コストは下がり続けており、日本全国のあらゆる地域に広げることで、温暖化防止に貢献でき、エネルギー自給率を高めるだけでなく、化石燃料の輸入にかかる富の流出に歯止めをかけ、経済的発展を促し、日本の国際的な地位向上につながります。再生可能エネルギー拡大こそ世界の流れであり、日本でこそ求められています。50年のゼロエミッションをめざし、COP28で合意された2030年までに再エネを3倍化させ、電力の7割とし、さらに2035年は8割をめざすことを求めます。
<民主的で透明性のある審議を> あらゆる国民が影響を受けるエネルギーの在り方、気候変動対策に対して、市民の意見を反映させる場が短い期間のパブコメなどに限られています。また国会に諮られることがないのは問題です。審議会の構成メンバーの年齢や性別の偏りを是正し、議論には女性や今後影響を受ける若者、多様な立場の専門家、環境団体が多数参加することが不可欠です。審議される論点や議論内容を国民に分かりやすく、時間をかけ、丁寧でもっと民主的、透明性を高めた議論が行われるべきです。
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