2011年9月1日 ジェンダー平等

平和と女性の人権 日本人であることを考えさせられた旅第10回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議(韓国・ソウル)に参加して

 新日本婦人の会副会長 笠井貴美代

     新婦人しんぶん 2011年9月1日号

アリランの歌とともに踊りも。歓迎会で。

アリランの歌とともに踊りも。歓迎会で。


8月12日~15日、第10回日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議が韓国・ソウル市で開かれました。新婦人から参加した笠井副会長のレポートです(詳細は『月刊女性&運動』10月号)。

日本女性客でにぎわう街

ソウルは、日本の夏の海外ツアー人気№1だけあって、日本の女性客で大にぎわいでした。日本の植民地支配とかかわりの深い歴史的建物や博物館と、デジタルの大広告とが共存する活気ある街です。
金学順(キムハクスン)さんが日本軍「慰安婦」だったと最初に名乗り出て20年。いまだに日本政府は被害者に公式謝罪をせず、補償にも背をむけたままです。
会議は「アジア連帯20年の活動の評価と今後の進路―記憶、教育、そして連帯」と題して、9カ国から150人が参加して開かれました。分厚い会議資料には新婦人のレポートも収録され、朝10時から夜9時までびっしりと熱い討論がくりひろげられました。

「生きているうちに解決を」

高齢となった被害女性たち。タイから病気をおして参加した盧寿福(ノスボク)さんは91歳。21歳のとき強制連行され、シンガポール、タイなどで日本軍の性奴隷にさせられました。戦後も帰国できずタイに残り、苦難の人生を送ってきました。そのスボクさんが、生活費を節約して貯(た)めたお金5万バーツ(約15万円)を東日本大震災で被災した在日朝鮮学校に寄付。ドラマ『
冬のソナタ』の次長役の俳優で支援団体代表のクォン・ヘヒョさんに渡し、大きな拍手に包まれました。
日本から参加した宋神道(ソンシンド)さん(90歳)は今年3月、宮城県女川で地震と津波に遭い九死に一生を得ました。16歳のときだまされて中国で「慰安婦」に。戦後日本で生活し、「日本政府からキチンとした謝罪を受けるまで死ねない。日本にも死にも絶対負けない」と気丈に発言しました。
「被害者」から「人権アクティビスト(活動家)」へ、運動をリードする役割を果たしています。  20年はあまりに長く、韓国では、確認された被害者234人のうち生存者は69人、今年だけでも10人が亡くなっています。「生きているうちに解決を」の叫びが踏みにじられ続けているのです。

日本政府へのいらだち

街のあちこちに日本の植民地支配の歴史の跡が。ムクゲが咲きみだれる西大門独立公園

街のあちこちに日本の植民地支配の歴史の跡が。ムクゲが咲きみだれる西大門独立公園


「相も変わらぬ日本政府、とりわけ政権交代したにもかかわらず、この2年間まったく変化のきざしも見えない。どうすれば変わるのか」―尹美香(ユンミヒョン)韓国挺身隊問題協議会常任代表はいらだちと怒りをこめて問題を投げかけました。いま大震災・原発事故をへて根本から問われている日本の政治。長年、政治をゆがめてきた利権まみれ、財界・アメリカいいなりの勢力が、教科書から「慰安婦」問題を削り、侵略戦争を美化しています。憲法にもとづく日本再生が、「慰安婦」問題でも解決へ新しい展望をひらけるし、そうしなければと責任を痛感しました。

ひろがり続ける運動

無念の死が相次ぐ。33人の被害ハルモニが眠る「望郷の丘」

無念の死が相次ぐ。33人の被害ハルモニが眠る「望郷の丘」


女性たちの運動は、「慰安婦」制度を戦時性奴隷制として世界に認知させ、加害国政府の責任を明確に、また各国議会の日本政府への決議、さらに日韓での自治体決議へとひろがっています。
アメリカからは、「4年前の下院決議後、日本政府は何もしていない。急ぎ責任をとるよう、この7月29日、日本大使館に書簡を届けた。ニューヨークで8月15日から『慰安婦』展を開催。ホロコーストと並んで同じ時代の反人類犯罪。人類がともにたち向かうべき」と。カナダからは「オンタリオ州やトロントで教育カリキュラムや授業に『慰安婦』問題をとりいれた」など、運動は休むことなくひろがっています。新婦人が「慰安婦」パンフをつくり、1万冊以上普及、若い世代もともに学習し、自治体決議や署名につなげていることが、海を越えた連帯行動ともなっています。
会議は「日本政府と日本の国会に対する私たちの要求」を決議し、行動計画を採択。戦争と女性の人権博物館建設予定地でのセレモニー、天安市「望郷の丘」での日本軍「慰安婦」被害者のお墓・納骨堂へのお参りで終了しました。

草の根から、さらに

8月15日は、日本の植民地支配からの解放記念日。街には親子連れがくりだし、コンサートやもちつき、集会など喜びにわいていました。アジア2000万人以上の命を奪い、女性の人権を極限まで踏みにじった日本の侵略戦争と軍国主義。日本人としてこの歴史に真剣にむきあうことなしに日本の未来はない、韓国に魅せられる多くの女性とともにいかに考え、「慰安婦」問題の解決へ力をあわせていくか、私たちの役割を考えさせられる旅となりました。

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