これからのエチケット

etiquette

これからのエチケット——政党支持の自由について

羽仁説子

「政党支持の自由の原則」ということばは、もうここ何年来うたわれるようになっています。しかしこの原則を正しくみんなが自分のものとして理解し、行動して来たかというとまだまだ不明確だったと思います。

私たちの会の性格(案)は、「思想信条をこえて目的に賛成ならばだれでも入会できます」。私たちの思想や信条は、この会に入ってからその運動をとおして、お互いに変化し成長していくことでしょうが、大切なことは、いつでもこれは、だれの前にも開かれていて、つぎつぎといろいろの思想や信条をもった人が入ってこられるものでなければならないことです。

私たち婦人の問題は、日々の小さいなやみから、大きな民族的な問題まですべて政治につながっているということはいいすぎではないでしょう。まだ草案ではありますが、私たちが目的としてかかげ、それをめざして力をあわせていこうとしている五カ条(憲法改悪に反対し…日本の独立をかちとり…民主主義をまもり…平和をうちたてます等々)もすベて政治にかかわる問題です。私たちが大きく手に手をとりあってこれらの目的の実現のため努力していくならば、その一歩一歩が、小さな政治活動であり、全体として大きな政治力になるでしょう。そして、各政党と協力していくことは、日常の問題になります。

こうして私たちは、自分たち婦人の問題のため闘っていく過程で、どの政党とどのように協力出来るか、どの政党がどの問題では味方であるかを、単に選挙期間中でなく、日々、身をもって学ぶことになるでしょう。

政党支持の自由ということは政治からの逃避でないことはいうまでもありません。いかなる政党の人もこの会に入ることができるし、政党員としてのその人の政治活動は自由であり、保障されなければならないのです。「あの人は自民党に投票したらしい」とか「あの人は共産党の応援演説をしていた」とかいうことで非難したり、片づけたりしないで、おたがいにその主張や話を落ちついてききあう寛大な気持ちを持つことが、これからのエチケットだと思います。

これらのことを、おたがいがはっきりと心にとめ、しっかりと身につけていくならば、きっと私たち新しい婦人組織の間でこそ、正しい政治活動のスタイルが生み出されていくことと信じます。


「結成準備連絡ニュース3号」(1962年4月15日)より。羽仁さんは創立のよびかけ人、代表委員です。